平和会吉田病院|緩和ケア専門研修について

研修医の方へ

緩和ケア専門研修

研修プログラム

到達目標

1)住み慣れた地域でその人らしく最後まで暮らせるよう、疾患を問わない地域緩和ケアを実践することができる。
2)法人内外の医療機関・多職種と協働し、切れ目のない継続的なケアを提供することができる。
3)アドバンス・ケア・プランニングの実践及び、医療者や地域住民への普及・啓蒙ができる。
4)日本緩和医療学会の要項に即し、研修修了後の専門医取得に向けた準備ができる。

研修内容

1)基礎項目
 A.患者及び家族との信頼関係が構築できる。
 B.患者及び家族に対して、診療内容を理解・納得できるよう説明できる。
 C.チーム医療が円滑におこなえるよう、多職種との信頼関係を確立できる。
 D.他科からの診療依頼に対し、円滑に対応できる。
 E.緩和医療に携わる職員や自らの心理的ストレスを理解し、それを共有することができる。
 F.全人的苦痛を理解し、対応することができる。


2)専門項目

 G.包括的評価

  GIO:患者を全人的に理解し、苦痛だけでなく患者の支えとなるものをとらえることができる。

  SBOs:

     ① 全人的苦痛の概念について述べることができる。

     ② 患者の苦痛を多面的にとらえることができる。

     ③ それぞれの苦痛に対して、マネジメントのプランを列挙することができる。

     ④ 患者の希望、信念、価値観などの多様性について配慮し、

      患者の意向に沿った治療目標をたてることができる。

     ⑤ 苦痛の早期発見、治療や予防について配慮することができる。


 H.痛みのマネジメント

  GIO:患者の痛みを評価し、薬物療法だけでなく、非薬物療法を含めた様々な手段を使い、

      痛みを緩和することができる。

  SBOs:

     ① 痛みの定義を述べることができる。

     ② 痛みの成因やそのメカニズムについて述べることができる。

     ③ 痛みのアセスメントについて具体的に説明することができる。

     ④ 痛みの種類と、典型的な痛み症候群について説明することができる。

     ⑤ WHO方式がん疼痛治療法について具体的に説明することができる。

     ⑥ 神経障害性疼痛について説明する ことができる。

     ⑦ 痛みに対するケアについて述べることができる。

     ⑧ WHO方式がん疼痛治療法に準じて、痛みに対する薬物療法を適切に選択することができる。

     ⑨ 患者の状態に合わせて適切にオピオイドを選択することができる。

     ⑩ 必要に応じて鎮痛補助薬を選択することができる。

     ⑪ 薬物の経口投与や非経口投与を適切に行うことができる。

     ⑫ オピオイドの副作用に対して、適切に予防、処置を行うことができる。

     ⑬ オピオイドによる精神依存について理解し、対応することができる。

     ⑭ 放射線療法の適応について考慮することができ、適切に施行するか、

      もしくは専門家に相談および紹介することができる。

     ⑮ 外科的療法の適応について考慮することができ、適切に施行するか、

      もしくは専門家に相談および紹介することができる。

     ⑯ 神経ブロックの適応について考慮することができ、適切に施行するか、

      もしくは専門家に相談および紹介することができる。

     ⑰ 非がん性疼痛を評価し、対応することができる。


I.痛み以外の身体症状のマネジメント

  GIO:痛み以外の身体症状について評価を行い、薬物療法だけでなく、

     非薬物療法を含めた様々な手段を使い、それらの症状を緩和することができる。

  SBOs:

   以下の症候や疾患に適切に対処することができる

     ① 倦怠感

     ② 食欲不振

     ③ 悪液質症候群

     ④ 悪心・嘔吐

     ⑤ 消化管閉塞

     ⑥ 便秘

     ⑦ 下痢

     ⑧ 腹水

     ⑨ 腹部膨満感

     ⑩ 吃逆

     ⑪ 嚥下困難

     ⑫ 口腔・食道カンジダ症

     ⑬ 口内炎

     ⑭ 口渇

     ⑮ 黄疸

     ⑯ 呼吸困難

     ⑰ 咳嗽

     ⑱ 胸水

     ⑲ 気道分泌過多

     ⑳ 尿失禁

     ㉑ 排尿困難

     ㉒ 乏尿・無尿

     ㉓ 水腎症(腎瘻の適応を含む)

     ㉔ 血尿

     ㉕ 褥瘡

     ㉖ 皮膚潰瘍

     ㉗ 瘙痒

     ㉘ 痙攣

     ㉙ ミオクローヌス

     ㉚ 四肢および体幹の麻痺

     ㉛ 振戦・不随意運動

     ㉜ せん妄

     ㉝ 浮腫

     ㉞ 発熱


 J.精神症状のマネジメント

  GIO:精神症状について評価を行い、薬物療法だけでなく、非薬物療法を含めた様々な手段を使い、

      それらの症状を緩和することができる。

  SBOs:

   以下の症候や疾患に適切に対処することができる。

     ① 抑うつ

     ② 適応障害

     ③ 不安

     ④ 睡眠障害


 K.非がん疾患の緩和ケア

  GIO:非がん疾患患者に対して、専⾨家と協⼒しながら緩和ケアの適応について検討し、

      適切に緩和ケアを提供することができる。

  SBOs:

   以下の疾患に、専門家と協力して適切に対処することができる。

     ① 肝不全

     ② 呼吸不全

     ③ 心不全

     ④ 腎不全

     ⑤ 神経・筋疾患

     ⑥ 認知症

     ⑦ 後天性免疫不全症候群(HIV/AIDS)


 L.心理的反応

  GIO:心理的反応を評価し、適切に対応することができる。

  SBOs:

     ① 否認や怒りなどの心理的反応を認識し、適切に対処することができる。

     ② 悲嘆喪失反応が様々な場面で、様々な形で表れることを理解し、

      それが悲しみを癒すための重要なプロセスであることに配慮することができる。

     ③ 心理的防衛機制について、配慮することができる。


 M.社会的問題

  GIO:社会的問題を評価し、適切に対応することができる。

  SBOs:

     ① 医療保険制度、介護保険制度などの社会保障制度を理解している。

     ② 患者や家族のおかれた社会的、経済的問題に配慮することができる。

     ③ 家族間の問題に配慮することができる。

     ④ 患者・家族の社会的、経済的援助のための社会資源を適切に紹介、利用することができる。


 N.スピリチュアルケア

  GIO:患者のスピリチュアルペインを正しく理解し、適切な援助をすることができる。

  SBOs:

     ① スピリチュアルペインの代表的なカテゴリーを理解している。

     ② 診療にあたり患者・家族の信念や価値観を尊重することができる。

     ③ 患者や家族、医療者の死生観がスピリチュアルペインに及ぼす影響と重要性を

       認識することができる。

     ④ スピリチュアルペイン、及び宗教的、文化的背景が患者の QOL に大きな影響を

      もたらすことを認識することができる。

     ⑤ 患者・家族の持つ宗教による死のとらえ方を尊重することができる。


 O.倫理的問題

  GIO:緩和ケアにおける倫理的問題を理解し、適切に対応することができる。

  SBOs:

     ① 医療における基本的な倫理原則について述べることができる。

     ② 緩和ケアにおける倫理的問題について説明することができる。

     ③ 緩和ケアにおける倫理的問題について、倫理原則にもとづいて多職種のスタッフと

      検討することができる。

     ④ 患者が治療を拒否する権利や他の治療についての情報を得る権利を尊重することができる。

     ⑤ 治療の中止・差し控えについて、適切に対応することができる。

     ⑥ 尊厳死や安楽死について社会的議論を把握している。


 P.意思決定支援

  GIO:患者・家族の意向を尊重し、意思決定支援を行うことができる。

  SBOs:

     ① アドバンス・ケア・プランニングの概念について述べることができる。

     ② 患者・家族と治療およびケアの方法について話し合い、治療・ケアの計画をともに

      作成することができる。

     ③ 患者や家族の治療に対する考えや意志を尊重し、配慮することができる。

     ④ 患者の自立性を尊重し、意思決定支援を行うことができる。

     ⑤ 療養場所を決定する際に必要な情報を提供し、意思決定支援を行うことができる。


 Q.コミュニケーション

  GIO:患者の人格を尊重し、コミュニケーションをとることができる。

  SBOs:

     ① 患者が持つコミュニケーションスタイルやコーピングスタイルを理解し、適切に対応し、

      援助することができる。

     ② 悪い知らせを患者・家族に伝える具体的な方法について述べることができる。

     ③ 言語的なコミュニケーションだけでなく、非言語的なコミュニケーションにも

      配慮することができる。

     ④ 患者に病気の診断や見通し、治療方針について適切に伝えることができる。

     ⑤ 患者の希望、意向や価値観について傾聴することができる。

     ⑥ 患者からの困難な質問や感情の表出に対応することができる。


 R.苦痛緩和のための鎮静

  GIO:苦痛緩和のための鎮静を適切に行うことができる。

  SBOs:

     ① 苦痛緩和のための鎮静の適応と限界、その問題点について述べることができる。

     ② 患者と家族に鎮静について説明し、必要時に適切な鎮静を行うことができる。

     ③ 他の医療従事者からの鎮静についての相談に応じ、適切に対応することができる。

     ④ 鎮静についての社会的な議論について把握している。


 S.疾患の軌跡

  GIO:疾患の軌跡について理解し、予後の予測をすることができる。

  SBOs:

     ① 疾患による軌跡の違いについて述べることができる。

     ② 予後予測ツールを理解し、限界についても述べることができる。

     ③ 予後予測にもとづき、患者・家族に適切な説明をすることができる。


 T.臨死期のケア

  GIO:臨死期における患者・家族に対して適切に対応することができる。

  SBOs:

     ① 患者が死に至る時期および死後も、患者を一人の人として、尊厳を持って

      接することができる。

     ② 看取りの時期及び死別直後の家族の心理に配慮することができる。

     ③ 看取りの時期であることを適切に判断できる。

     ④ 終末期の輸液について十分な知識を持ち、適切に施行することができる。

     ⑤ 患者と家族の意向を尊重し、患者の病態にあわせて看取りに向けて必要な指示を

      出すことができる。

     ⑥ 看取り前後に必要な情報を、適切に家族に説明することができる。


 U.家族ケア

  GIO:家族が抱える問題に気づき、家族のケアを適切に行うことができる。

  SBOs:

     ① 家族背景を把握することができる。

     ② 家族の構成員が持つコミュニケーションスタイルやコーピングスタイルを理解し、

      適切に対応することができる。

     ③ 家族の構成員がそれぞれ病状や予後に対して異なる考えや見通しを持っていることに

      配慮することができる。

     ④ 家族の負担感や疲労に気付き、適切に対応することができる。


 V.遺族ケア

  GIO:死別・喪失による悲嘆反応に気づき、適切に対応することができる。

  SBOs:

     ① 死別・喪失による非嘆反応のパターンについて述べることができる。

     ② 複雑な悲嘆反応をきたしやすい条件(リスクファクター)を述べることができる。

     ③ 予期悲嘆に気づき、適切に対応することができる。

     ④ 死別を体験した人を支援することができる。

     ⑤ 複雑な悲嘆反応に気づき、適切に対応することができる。

     ⑥ 抑うつを早期に発見し、専門家に紹介することができる。


 W.医療従事者への心理的ケア

  GIO:自分自身およびスタッフの心理的ケアを行うことができる。

  SBOs:

     ① チームメンバーや自分の心理的ストレスを認識することができる。

     ② 自分自身の心理的ストレスに対して、他のスタッフに助けを求めることの重要性について

      理解することができる。

     ③ 自分自身の個人的な意見や死に対する考え方が患者およびスタッフに影響を与えることを

      認識することができる。

     ④ ケアが不十分だったのではないかという自分、およびスタッフの罪責感を

      チーム内で話し合い、乗り越えることができる。

     ⑤ スタッフサポートの方法論を知り、実践することができる。

     ⑥ スタッフが常に死や喪失体験と向き合っているということを理解し、

      正常の心理反応といわゆる燃え尽き反応を区別することができる。


 X.チーム医療

  GIO:チーム医療を実践することができる。

  SBOs:

     ① チーム医療の重要性と難しさを理解し、チームの⼀員として働くことができる。

     ② リーダーシップの重要性について理解し、チーム構成員の能力の向上に

       配慮することができる。

     ③ 他職種のスタッフ及びボランティアについて理解し、お互いに尊重しあうことができる。

     ④ 基本的なグループダイナミクスとその重要性について述べることができる。


 Y.コンサルテーション

  GIO:緩和ケアについてのコンサルテーションを適切に実施することができる。

  SBOs:

     ① コンサルテーション活動について述べることができる。

     ② 依頼者からの依頼に応じて、適切な推奨および直接ケアを行うことができる。

     ③ 推奨および直接ケアは患者や家族の個別性に配慮し、診療ガイドライン等に基づいて

      行うことができる。

     ④ アセスメントや推奨の内容について依頼元の医療従事者と話し合うことができる。

     ⑤ 必要に応じて、依頼元の医療従事者とカンファレンスを行うことができる。


 Z.地域連携

  GIO:地域の医療機関と連携して、それぞれの地域に適した医療を提供することができる。

  SBOs:

     ① 自分が所属する組織の地域における役割を述べることができる。

     ② 周囲の医療機関と協力して、緩和ケアを提供することができる。

     ③ 地域の医療資源、社会資源を把握することができる。

     ④ 患者と家族が希望する療養場所に移行できるよう支援することができる。

     ⑤ 在宅医療に携わる医療従事者と連携し、在宅緩和ケアについて相談または

      実践することができる。


 a.腫瘍学

  GIO:腫瘍学についての知識を得、患者にとって最善の医療の選択に関わることができる。

  SBOs:

     ① 基本的な腫瘍学に関する知識を得ることができる。

     ② 外科療法の適応について理解し、適切に専門家に相談することができる。

     ③ 放射線療法の適応について理解し、適切に専門家に相談することができる。

     ④ がん薬物療法の適応について理解し、適切に専門家に相談することができる。

     ⑤ 以下に挙げた腫瘍学的緊急症に対して、専門家と協力して適切に対処することができる。

      1. 高カルシウム血症

      2. 抗利尿ホルモン不適切分泌症候群(SIADH)

      3. 上⼤静脈症候群

      4. 肺血栓塞栓症

      5. 大量出血(吐血・下血・喀血など)

      6. 脊髄圧迫

      7. 頭蓋内圧亢進症

     ⑥ わが国におけるがん医療の現況について述べることができる。


 b.教育・研究

  GIO:緩和医療の専門家として、常に最新の知識を得るだけでなく、

      緩和ケアの教育・研究にも携わり、緩和医療の発展に寄与することができる。

  SBOs:

     ① 臨床現場で起こる日常の疑問について、常に最新の知識を得るよう心がけることができる。

     ② 教育の基本的な手法について知り、実践することができる。

     ③ 所属する各機関及びその地域において緩和ケアの教育・啓発・普及活動を行うことができる。

     ④ 臨床研究の重要性を知り、緩和ケアに関する未解決な問題に対して行われる臨床研究に

      参加することができる。

     ⑤ 医学論文の批判的吟味を行うことができる。

     ⑥ 緩和ケアに関する学会・研修会に積極的に参加し、診療・研究業績を発表することができる。


研修例

1)2年間のスケジュール例

 

研修内容

1年目

緩和ケア病棟・外来(家族面談も含む)・緩和ケアチーム

2年目

1年目研修内容に加え、在宅緩和ケア

 

2)週間スケジュール例

 

AM

緩和ケア病棟

一般病棟

診療所

在宅緩和ケアの訪問診療に同行

緩和ケア病棟

一般病棟

緩和ケア病棟

一般病棟

緩和ケア病棟

一般病棟

PM

緩和外来

緩和ケア病棟

一般病棟

緩和ケアチーム回診・カンファレンス

診療所

在宅緩和ケアの訪問診療に同行

緩和ケア病棟回診・カンファレンス

夕方

 

 

 

 

振り返り

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